作家の野坂昭如氏が亡くなりました。沖縄に赴任していたとき、沖縄戦をテーマにした戦争童話集を書くため、現地を訪れていた野坂さんを取材する機会に恵まれました。
反骨の男は、愛想笑いひとつ見せませんでした。静かにアメリカ軍が上陸した読谷村の海岸を見つめていました。沖縄戦の資料を集めて、読み込んだとも聞きました。作家は、才能で書いているものだと思っていただけに驚きました。野坂さんは、テレビ、音楽、映画、そして政治に関わった好奇心の塊だっただけに、若造の取材を受けてくれたのでしょう。インタビューも、丁寧に答えて頂きました。「沖縄に対して負い目みたいなものを抱えてきた。書こうとしても書けなかった」と繰り返しました。
沖縄で放送されたリポートは好評で、全国放送されることになりました。ところが、土壇場になって待ったがかかりました。野坂さんが再び国政に挑戦するらしいのです。そんな素振りは見せなかっただけにびっくりしました。しかし野坂さんらしいなと思いました。沖縄と向き合って、反骨精神に火がついたのかもしれません。
