オウム真理教の施設に強制捜査が入ってから20年になります。最前線に陣取っていた私は、前の夜、万一に備えて、実家に電話したのを覚えています。
逮捕された信者の母親に取材したことがあります。身体が弱い息子が、どんどん狂信的になり、ついには面会も出来なくなった様子を話してくれました。そして、人の命を奪うような犯罪にだけは、関わっていて欲しくない、と吐露しました。取材の目的の一つが、顔写真の入手でした。私は切り出しました。するとその母親は、泣きながら言うのです。息子は、教団の決まりに従って、写真を破棄してしまった。ただ一枚だけ残っている。この一枚を渡せば、子どもの顔さえ忘れそうで恐いんですと。私はお礼を言って立ち去りました。
※写真は当時の取材メモより