アメリカの次期大統領に共和党のドナルド・トランプ氏が当選しました。わたしがショックだったのはトランプ氏の当選だけでなく、大手メディアの世論調査がことごとく外れたことです。
三大ネットワークなどテレビ大手は、新聞大手と組んで独自の世論調査を実施しています。投票日直前、例えばABCは民主党のクリントン候補が4ポイント差でリードと報じるなどクリントン氏の優勢を伝える報道ばかりでした。勝敗を決める激戦州についても、フロリダ州とオハイオ州は当然としても、本来、共和党が強いノースカロライナ州とアリゾナ州も接戦が伝えられ、わたしはクリントン氏の圧勝を確信しました。ところがふたを開けると、トランプ氏は激戦州も制し、クリントン氏が取 らなければならない中西部でも健闘しました。なぜ大手メディアは間違ったのか。
各メディアがこぞって反省する記事を載せています。理由のひとつ目が、▲世論調査の手段です。ほとんどの調査は固定電話にかけられ、回答を得る仕組みです。いまは、携帯電話が主流なのに、携帯電話では多くの有権者が回答してくれません。この結果、回答者が限られてしまいます。
二つ目が▲世論調査の対象が現実とかい離したことです。調査では投票に行くと答えたのに実際は行かなかったり、逆のことが起きてしまったと考えられます。今回の選挙では、地方の有権者が予想より多く投票し、若者や黒人の有権者が予想より少なかったと推測されています。特に今回は、学歴が高くない白人層のサンプルが少なかっ たと指摘されています。
三つ目が▲世論調査の回答自体が不正確だったことです。調査では建前で答え、実際は本音で投票したいわゆる「隠れトランプ支持者」の存在です。今回はぎりぎりまで投票行動に迷った有権者も多く、調査に反映されなかったと見られます。
四つ目が▲大手メディアの思い込みです。既成政治に対する有権者の不満を過小評価し、現実を直視せずに分析を行なったのではないかと言われています。事実、アメリカよりも日本のメディアの方が客観的な報道をしていた気がします。わたしの友人も、「クリントン氏の集会は意外とガラガラですよ。トランプ氏には熱気を感じる」と指摘していました。
トランプ氏の当選を予想した新聞社があります。ロサンゼルス・タイムズです。南 カリフォルニア大学のチームとの合同調査です。チームは今回の分析について、まずどの程度、投票に行くつもりなのかを聞いたうえで、どの候補にどの程度、投票するつもりなのか、丁寧に質問しています。多くのメディアが、これからの世論調査は、量より質を重視しなければならないと結論付けています。