自然と調和した藤沢市の住環境を守り、発展させていくために活動している団体「鵠沼の緑と景観を守る会」と「鵠沼景観まちづくり会」で講演した内容が各会報に記載されましたので、全文を載せます。貴重な機会をいただき、お礼申し上げます。
「藤沢駅南口に大規模な公園広場を」
藤沢の価値とは何か。それは、湘南の海を背景に緑豊かな住宅街が広がっていることではないでしょうか。サラリーマンが、わざわざ満員電車に乗って通勤します。それは藤沢に価値があるからです。こうした価値を高めることが重要です。
わたしの提案は、「藤沢駅南口に大規模な公園広場」を作ることです。駅前こそがまちの顔です。公園広場を作ることは、駅前の再生だけでなく、自然環境を大事にする価値観を象徴するものとなります。
都市部の駅前は、金太郎飴のように同じです。駅ビルがあって、地上は車に独占されています。わたしは、これを変えたいと思っています。幸い、南口には一定の空間が広がっています。これこそ宝です。
最低限の交通の利便性は確保しつつ、いま南側にある緑のある部分を二倍以上に広げます。車道を二車線に縮小し、待機しているタクシーなどは、デパート西側にある通りに移します。市民が公園広場を通過して、東西南北から行き来できるようにします。中央には芝生が広がります。中途半端はダメです。映画祭などイベントも開けます。ニューヨーク市の「ブライアントパーク」や東京の「南池袋公園」が目標です。公園がまちのイメージを一変させた例です。
市議会では、▲屋外広告物や建物の高さを制限すること、▲デザイン性の高い「湘南を感じさせる」駅舎にすること、▲デパートを支援することも提案しました。提案を実行するだけで藤沢の価値は高まります。
「緑地率目標の放棄、その影響と対策」
藤沢市は、土地に対する緑の割合、緑地率の目標を事実上放棄することを明らかにしています。
これまで30%としてきた目標について、住宅街の緑が減っているのでいまの26%から引き上げるのは難しいとしています。その理由として「北部の区画整理や慶応大学周辺の街づくりなど適正規模の開発が必要だ。民間の開発圧力もある」としています。さらに「財政も厳しいので、やみくもに増やすのではなく、質の確保に努める」
と答えています。
これは、藤沢市が環境より、開発を優先する姿勢を明確にしたものです。わたしは、具体的な代替策も示さずに、目標を放棄する考えに強い危機感を覚えます。人口も減り、財政が厳しくなるからこそ、巨額の費用をかけて、新しい街を作るのではなく、今ある街を強くすべきです。
効率的な行政運営をめざして、住宅や公共施設を集約する「コンパクトシティ」構想が重要なのに、藤沢市は相変わらず、右肩上がりの時代の発想から抜け出せません。
全国的には、将来を見越して住宅開発を抑制する動きも出ています。例えば、高層マンションが乱立する神戸市では、学校の教室不足を盾に、業者へ協力を求める条例を作っています。
藤沢市の価値は、海を背景に緑あふれる住環境があることです。今こそ、住宅街の緑を増やす積極的な対策を打つ必要があります。そのために▲藤沢駅南口に大規模な「公園広場」を作ること、▲緑や景観を守る独自ルール「住民協定」に法的な裏付けを与えることが有効だと考えます。
さらに現行の制度の積極的な活用も考えられます。▲「緑の広場」や「市民農園」を増やしたり、▲「憩いの森」の条件を緩和するほか、▲「保存樹木・樹林」の指定を
増やすと共に補助金を引き上げることなどです。
藤沢市にはおよそ300の公園があり、整備中の計画もあります。しかし公園を作る際に余りにも「公平性」が重視され、せっかく土地があるのに整備しない側面があります。地域限定の基金を募ってでも、手が付けれるところは手を付ける姿勢が重要だと思います。
最後に根源的な問題は、緑や公園を増やそうとする担当課が、開発を進めようとする担当課と一緒の部局に入っていることです。緑を守り、増やすには、組織を独立させる必要があります。今のままでは、政策は変わりようがありません。