(民間の活用も)
学力の二極化に対応するには、まず教師が授業に集中できるよう分業化が大事です。しかし学力が高い子どもに対応するには、民間の力も無視できません。保護者からは、学習塾の役割は、受験勉強だけでなく、進学情報を入手できる点が大きいと聞きます。ところが学校の進路指導は、受験からは一線を引いています。民間の力も借りながら、進学や就職情報を提供しつつ、誰もが最適の選択ができる新しい体制が必要だと思います。
民間を活用した例として、15年前に始まった杉並区立和田中学校の改革が有名です。民間出身の校長は、実社会で活躍する人物を講師として招いたり、学校外の問題をテーマに話し合う授業を始めました。そして二極化に対応するため、成績が低い生徒には、土曜日にボランティアが補習を行なう一方、成績が高い生徒には、学習塾の先生が教える週4日間の補習を取り入れました。一律ではない、オーダーメイド的な教育、今こそ求められる改革です。
(教師が変わる必要)
将来、雇用形態が激変する可能性がある中、学習の在り方も問われ始めています。これまでの知識を詰め込む教育から、みずから課題を発見し、解決する思考力や判断力を重んじる教育への転換です。ところが、こうした主体性や行動力を育てる教育を学校で根付かせるには、教師自身が変わらなければなりません。民間ではすでに教師自身を教育するプログラムがあります。一方的な授業を行なうのではなく、子どもが持っている本来の力を引き出す役割について学びます。また教師の多様性を広げるため、民間の人材を選抜して、講師として学校現場に派遣するプログラムもあります。学校の授業は、教員免許をもった教師でなければならないという固定概念を破ろうとしています。
(アクティブラーニングの具体例)
こうした主体的な授業、「アクティブラーニング」を実践する方法として、教育と探求社の学習プログラムが注目されています。児童生徒がグループになって、実際の企業などから、特定のテーマについて、一年間かけて調べ、最後に提言します。現場でのインタビューやアンケート調査など、「足で稼ぐ」内容も含まれています。プログラムを通して、「自分をコントロールし、やり遂げる力」も養われるほか、試験の成績も向上しているそうです。
(21世紀にふさわしい学校も)
以上がこれからの時代に必要な学校像ですが、現実にこうした学校が現れ始めています。千代田区立麹町中学校は、中期末テストや宿題を取りやめ、細かい小テストに切り替えました。また数学ではタブレット端末を使って自由に勉強します。これまでと違って、個人個人に合わせた学習となっているのです。また放課後の在り方についても変えました。和田中に似た方式で、学校の中で、東大生らが、学習についていけない生徒のみならず、授業では足りない生徒も教えています。
また高校ではありますが、通信制の「N高校」では、プロ講師による授業をネット配信で見て勉強します。学校に拘束されない分、自分の好きなことや、やりたいことを追求できます。さらに通学コースでは、エンジニアや小説家など各界のプロが教える授業なども受けられます。スマートフォンの普及は、全く新しい教育を可能としているのです。わたしは公教育をもっと強くしたいと思いますし、もっと自由にしたいと思っています。子どもの貧困が問題となる中、学力こそ保証されなければなりませんし、子どもの持つ可能性を伸ばす学校でなければなりません。将来、ノーベル賞級の研究者や、国連事務総長のようなリーダーが生まれてくれたらいいなと思っています。
教育こそ、まちの強みになります。「教育なら藤沢市」をめざしましょう。