作家で経済企画庁長官を務めた堺屋太一さんが亡くなりました。堺屋さんとのつながりは全くありませんが、堺屋さんがある統計の生みの親だと知って、びっくりしました。
それが、内閣府の「景気ウオッチャー調査・街角景気」です。これは、名前の通り、庶民感覚を統計化したもので、景気に敏感なタクシーの運転手やスーパーの店長などが対象の調査です。
経済ニュースを担当していたとき、わたしが一番好きな統計でした。なぜなら、ほかの統計が、しっくり来ないのに、「街角景気」だけはなんだかしっくり来たのです。
記者時代の選挙取材でも同じような感覚がありました。たいてい取材相手は、地元の政治家や業界関係者ら、いわゆる事情通です。どの候補がどれくらい得票するか予想する、票読みの参考にします。
ところが、無党派層が半数近くを占める中、的確な選挙取材は、年々難しくなっていたのです。
そんなとき、タクシーの運転手らとの話の方が、ずっと役立ったりしたのです。それは、事情通と違って、世の中の流れを感じ取っているからです。
いまのわたしは、立場は違いますが、こうした生活に根差した感覚を大事にしようと常に心掛けています。