アメリカでアジア系の住民に対する暴力事件が相次いで、社会問題となっています。日本でこの問題があまり取り上げられないことを残念に思います。
わたしは、留学中、暴力を受けた経験があります。夜間の帰宅中、考え事をしていた隙間をぬって、5、6人の集団に襲撃されました。四方を囲まれ、横から顔面を殴られました。体幹には自信があったのに反撃もできず、倒されました。財布を取られそうになり、思わず大声で助けを呼びました。
わたしは幸運でした。近所の人が出てきてくれて、集団は蜘蛛の子を散らすように逃げていきました。一瞬の出来事でしたが、死ぬかと思いました。そして、なぜマイノリティが、同じマイノリティを襲うんだという何とも言えない哀しみ、悔しさがこみ上げてきました。海外では、安全はお金で買うものだと言われます。わたしは、家賃や生活費を切り詰める必要がありました。
彼らは、背丈こそわたしと同じ位でしたが、未成年だったのではないかと感じました。貧困が犯罪に直結する厳しい現実を身をもって体験しました。いまでも、公教育を立て直したいと考える大きな理由の一つです。
わたしは学年でただ一人の日本人でした。中国や韓国、インドなど同じアジア系の留学生が多く、当時から国の勢いを反映していました。留学生仲間には、学業だけでなく、留学生会の活動でも助けてもらいました。
連邦議会では、アジア系アメリカ人に対するヘイトクライム対策を盛り込んだ法案が審議されます。日本でも川崎市が、ヘイトスピーチを規制する条例をつくりました。差別や暴力は、他人ごとではありません。