文藝春秋に掲載された矢野財務次官の論文が議論を呼んでいます。地方を含めた1100兆円を超える国の債務は、先進国で圧倒的に大きいのに、財政赤字を膨らませる話ばかりだ、コロナ対策は大事だが、バラマキが続けば将来、財政破たんするか、国民に大きな負担がのしかかると警告したのです。
これには借金である国債は日銀が買い取っているから大丈夫だなど反対意見もあります。わたしは、まっとうな議論だと感じています。経済ニュースのデスクだったころ、リーマンショックに出くわしました。取材したわけではありませんが、各国政府と中央銀行が協調して金融緩和と財政出動で対応していく様は、一大叙事詩ともいえるものでした。
そこで学んだのは、危機に際しては、速やかに、一挙に、大きく対策を打つこと、そして危機が収まってきたら、徐々に対策を縮小しなければならない、つまりメリハリをつけた政策が重要だということです。
コロナ危機でも危機管理能力が問われていますが、財政危機にどう備えていくかも同じだと思います。現にアメリカのFRBが緩和を縮小する「出口戦略」に再び取り掛かろうとしていますが、日銀は緩和政策を続けたままです。
わたしは、コロナ対策が審議された去年6月の補正予算委員会で、「財政規律が大事だが、それは財政的に余裕をもつことがこういう危機のためになるからだ。市民を救うためにも迅速かつ大規模な財政出動をためらうべきではない。住宅支援は柱になるべきだ」と意見しました。
そして今月の決算委員会では、「今年度予算では市民税が減少し、コロナ対策向けの国庫支出も少なくなっている。財政出動の拡大から、財政規律を守る方向に徐々に転換していくことも必要になっていく。歳入を増やすことが難しい中、歳出を削減していくことが大事ではないか」と指摘しました。
藤沢市の借金残高は1395億円ですが、健全か判断する基準からみると健全だとされています。藤沢市はまた、中期財政の見通しを改定していて、何も対策を打たないと2026年度には142億円の財源不足になると発表しています。介護や下水道事業費が増加するほか、公共施設の再整備や都市基盤の整備で歳出が増えるためです。財源不足を解消するため、新たな企業を誘致すると共に、事業の優先順位付けを進めるとしています。