藤沢市が本来取るべき道路の幅の取り方を誤ったため、2300万円に上る損害賠償を支払った上で住宅の建物を取り壊すことになりました。
計画建築部によりますと4年前、藤沢市が中心線の位置を誤って知らせたため、業者が本来と違う幅が4メートルの道路をつくり、それに合わせて住宅の建物が建てられたということです。ところが道路の位置が55センチメートル食い違っていることが判明し、本来の道路の位置に直すと更なるセットバック・道路後退が必要となり、建物にも引っかかることが判りました。
建築基準法では、建物の敷地は道路に接していることが必要で、道路の幅は原則として4メートル以上必要です。火災の延焼を防いだり、消防車の出入りに必要だからです。ところが建築基準法が施行された1950年当時は、狭い道路ばかりだったため、こうした道路については、建て替えの際には後退をすることを条件に「2項道路」または「みなし道路」という名前で認めた経緯があります。
藤沢市は8年前から3年間にわたって業務委託によって「2項道路」がどうなっているか調べ、調書にまとめ上げ窓口で公開しています。対象となっているのはおよそ6800路線、260キロメートルです。建物を建てることができる市道などは1300キロメートルに及ぶことから現在、5分の1が狭い「2項道路」に当たることになります。
しかしこの調書をめぐっては公開していない自治体も少なくなく、全国的には4メートル未満の道路が多く残っているのではないかと指摘されています。
法律の施行から70年ほどが経過し、その間、住宅の建て替えも進んで後退も行なわれました。しかし住宅の建設が優先されたため、道路の位置や幅の確認がいまほど厳しくなく、結果的に4メートルに達しない道路が実際には多く残っているのではないかと推測されます。
こうした事情を考えれば、今回のケースについて特例を認めたらどうかと聞きましたが、藤沢市は法律顧問と相談した結果、法律の順守が最優先されるべきであり、税金の投入をお願いすることになったと答えています。藤沢市では「2項道路」の改善に努めた結果、徐々に後退が進み、道路が広くなっているということです。
議会でも「市長はじめ責任が問われる」や「情報共有など担当課の再発防止が必要だ」などの厳しい意見が出されましたが、法律的な観点と所有者の生活を考えた結果、損害賠償の支払いを認めることになりました。
ちなみに「3項道路」というものもあって、土地の状況でやむを得ないため後退の幅を2.7メートル以上、4メートル未満にしている道路です。市内では江の島が指定されています。