来年度から東京都教育委員会が大学進学を支援するため、民間の塾講師などを高校に呼んで受験勉強を教える方針を固めたと一部で報じられました。経済的に塾などに行けない生徒を支援するためで、費用は教育委員会がもち、放課後や土日などに英語や数学を教える見込みだとしています。
藤沢市でも中学生の7割が学習塾や家庭教師を利用していることが生活実態調査で判っています。週に3日が42%で最も多く、週に2日が17.1%となっています。保護者の悩みも「進学や受験」が最も高く、次に「教育費」がつづいています。塾にかかる費用は重く、月に「3万円以上、5万円未満」が最も多くなっています。子どもたちの学力は事実上、学校ではなく、民間に支えられているといっても過言ではありません。
そして一番の問題は、学力の格差です。放課後の過ごし方が学力に直結する中、塾に行けない子どもたちをどう支援していくのかが問題です。藤沢市もボランティアが勉強を教える学習支援に注力していますが、抜本的な解決策が必要です。
まずは学校を勉強する場所に戻すという原点に帰ることです。本来ならば教師が勉強が分からない子どもを手取り足取り教えるのが筋です。しかし、いま教師は、生徒指導や部活動や行事に追われ疲れきっています。教師の成り手不足が社会問題化しているのは知られるところです。教師が授業に集中できる環境をつくることが何より求められていますが、一夜では変わりそうもありません。
学校が変わるのを待っている時間はないので橋渡し的な対策が必要です。わたしはそういう意味で民間の塾を活用すべきだと考えており、東京都教育委員会に注目しています。ただ公立学校は塾が得意とする受験勉強と相性が悪く、受験勉強を望むなら私立学校に行けばいいという議論になりがちです。
わたしも受験勉強に代表される詰め込み教育がよいとは思いません。子どもたち一人一人が伸び伸びと主体的に学ぶ自由な教育が柱になるべきだと考えています。それには理由があります。わたしが入った大学のゼミは、当時最先端のビジネススクール方式の授業で、詰め込み教育で育ったわたしは面くらったのです。実際の企業に対して販売戦略を提案するもので、何が課題でどう解決したらいいのか自分で考え、動かなければなりません。わたしは完全に置いてけぼりでしたが、「正解がない新しい授業」は貴重な体験となりました。
日本の教育は、詰め込み教育と自由な教育のせめぎ合いだったと指摘されます。保護者も自由な教育が大事だと言いながら、受験が近づくと詰め込み教育に走りがちです。わたしは現実を踏まえ、どちらも否定せずに学校で取り組めばいいと思っています。幸い文部科学省も自由な教育を重んじています。一方で渋谷区や国立市は、スタディークーポンで塾の利用ができるような制度を取り入れています。子どもの数である少子化対策が強調されますが、国際競争力を高めるためにも、公立学校の多様性を大切にしつつ、「教育の質」を上げることが必要だと思います。