熊本県庁を訪れたとき、一枚の案内板で、この地が、水俣病で苦しんでいる地であることを知らされました。公害の原点と言われる水俣病が、公式に確認されてから、今月でちょうど60年なのです。
記憶から消えない一枚の写真があります。アメリカの写真家、W.ユージン・スミスが撮った患者の写真です。母親が娘を風呂に入れている姿を写したもので、全世界に衝撃を与えました。スミスは、現地にとどまり、被害の実相を伝え続けました。時代はベトナム戦争から、ウォーターゲート事件にかけてです。まだ取材規制も緩く、ネット上での誹謗中傷もなく、プロフェッショナルたちが活躍できた時代です。
工場から流された有機水銀を原因とする水俣病は、高度成長期の暗部だと言えます。認定された患者は、二千人以上に上ります。そして認定基準をめぐる問題が長引き、二千人以上が、認定を受けるための審査を待っているということです。