最近、1960年代のロックに聞き入っています。60年代ロックの集大成と言えば、50年前、ニューヨーク州の郊外で開かれた伝説の「フェス」、“ウッドストック”です。
ザ・フー、ジェファーソン・エアプレーン、ジョー・コッカー、ジョーン・バエズにジミー・ヘンドリックス、数々の「レジェンド」が参加した反体制カルチャーの象徴です。
各地から40万人の若者が集まった音楽祭が、開催1か月前に、場所の変更を余儀なくされたことは知りませんでした。困った主催者たちを助けたのが、広大な農地をもつ一人の酪農家、マックス・ヤスガーでした。
ヤスガーは、ベトナム戦争を支持するばりばりの保守派。そんなヤスガーが音楽祭の開催を受け入れたのは、「政治的な考え方が違っても、表現の自由は守らなければならない」という強烈な信念だったそうです。
ヒッピーたちが集結した3日間の音楽祭は大盛況のうちに終わります。ステージに立ったヤスガーは、「あなたたちは、世界に証明して見せた。音楽を通じてみなが一つになれることを」と演説しました。
しかし、ヤスガーの住む地域の人たちは、違いました。音楽祭を快く思わない住民らは、ヤスガーの生産した牛乳の不買運動を起こしたり、損害賠償を求める裁判を起こすなど、嫌がらせをしたそうです。
ヤスガーは4年後に亡くなります。ロック雑誌「ローリングストーン」は、追悼記事を載せました。アーティストでもないのに異例の対応です。いま日本社会に必要なのは、マックス・ヤスガーのような人物なのではないかと感じざるをえません。