アフガニスタンで医療や復興支援を進めてきたNGOペシャワール会の中村哲医師が亡くなりました。沖縄平和賞の1回目の受賞者です。
4年前、藤沢市での講演会に出席しました。当時は、安保法制をめぐる議論が注目されていました。
海外の紛争地で、活躍している中村医師から、安保法制に力強く反対する言葉を聞きたい、わたしを含めた会場の多くが待っていました。
ところが、中村医師は、現地での医療や貧困の実態を語り、清潔な水こそが必要であり、井戸の掘削や用水路の建設こそが求められているととつとつと訴えたのです。
中村医師ほど戦争を憎み、平和を願った人はいないはずです。同時に中村医師は、国際政治に翻弄されてきたアフガニスタンを見てきたのです。
中村医師は、ペシャワール会のサイトのあいさつでこう書いています。
「人々の暮らしが、たかだか10年やそこいらのプロジェクトで変わるものではない。われわれの歩みが、人々と共にある氷河の流れであることをあえて願う。歩みはのろいが、氷雪を蓄え固めて、巨大な山々を確実に削り落とす」。
中村医師が、政治の力にどれほど期待していたか、講演だけでは分かりませんでした。政治家が、歴史をつくっているのだと考えるなら、大きな誤まりだと感じました。
中村医師のような市井の英雄からも、期待される政治を取り戻さなければならないと思い返しています。