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大阪市 名建築で読める子ども図書館

建設経済委員会の視察で大阪市を訪れ、世界的な建築家・安藤忠雄氏がつくった子ども向けの図書館を見学しました。

「こども本の森・中之島」は、おととし開館した図書館で、2本の川に囲まれている中之島に建てられました。中之島は、古くから大阪文化の中心地で、いまも市役所や中公会堂などが立ち並んでいます。図書館は3つのフロアで構成され、中は吹き抜けです。その中を階段や通路がつながれていて、迷路のような楽しさがあります。建物の壁は全面が本棚となっていて、本に囲まれたまさに森のような世界です。

この図書館は、安藤氏の提案から始まったもので、安藤氏が設計し、建設費を負担した上で大阪市に寄付したものです。安藤氏は、「これからの社会を担っていく子どもたちには、自由に世界に羽ばたいてほしい。幼いころから本を読んで豊かな感性と想像力を育んでほしい」と話しています。その上でネットにはない、自ら図書館に来て、たくさんの本の中から好きな本を選ぶ過程を経験することが重要だと指摘しています。

図書館は1万8000冊を所蔵していて、自然や日常生活、動物、未来など12のテーマに分かれて棚に並んでいます。生死に関する物語や絵本、詩も扱っていて、生きるのに前向きな一冊を選んでいます。またテーマごとに子どもが読めるやさしい本から、大人が読むような専門的な本まで用意されています。子どもを子ども扱いせず、興味関心をとことん伸ばしてもらおうという思いが感じ取れます。本棚の上の方にある本は下の方にも備えられていて、子どもたちは好きな本を手に取って、階段など好きなところで読むことができます。

子どものころ、よく図書館に行き、天文や歴史の本を読みました。母親も絵本の読み聞かせのボランティアをしていただけに図書館行政には強い関心があります。とくにわたしは、子どもが本を読む環境そのものが大事だと考えています。「こども本の森・中之島」のような一流の建築の中で本を読むことは、子どもに安心感を与えると同時に背筋が伸びる緊張感も与えます。そういう相反する感覚を磨けることが図書館の陰の役割なのではないかと思います。藤沢市には美術館も博物館もないのだから図書館には余計そういう役割が必要だと思います。

それにしても安藤氏が私財をはたいて、図書館を寄付する姿は見事としか言いようがありません。しかしそれだけにいい意味で注文も厳しいものが感じられます。安藤氏は、朝日新聞でのインタビューで「コロナ危機で日本には信頼できるリーダーがいないことが分かった。子どものころから知識を養い、自分で物事を判断し、日本や世界をつくってほしい」と寄付の理由を語っています。生ぬるい目的ではないのです。

今回の視察については、伊藤真由美館長をはじめ関係者のみなさまにお礼申し上げます。

こども本の森・中之島

こども本の森・中之島

こども本の森・中之島

こども本の森・中之島

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