元藤沢市議会議員 清水竜太郎 オフィシャルサイト

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東海道線事故 「災害」対応すべきだった

藤沢駅と大船駅のJR東海道線で列車が電柱とぶつかり、1時間以上、乗客が閉じ込められる事故が起こりました。この事故で横須賀線なども運転見合わせとなり、およそ15万人に影響が出ました。乗客ら4人がけがをしたほか、9人が体調不良を訴えたということです。
異例な事故であるばかりでなく、当日は茅ケ崎市や小田原市でも花火大会が開かれ、大勢の見物客が鉄道を利用していたという特別な事情がありました。加えて深夜とはいえ、連日の猛暑です。

東海道線は東京駅から熱海駅まで運転が見合わせとなりましたが、事故にあった列車だけでなく、その前後の列車もしばらく列車の中に待つことになります。各駅で大量の帰宅困難者が発生し、混乱することは予想できたはずです。

帰宅困難者であふれる藤沢駅

わたしは零時を過ぎてから事故を知りましたが、「これは大変なことになる」と直感しました。災害ではありませんが、災害に等しい事故への対応が必要になると思い、藤沢駅に駆けつけました。案の定、駅は混雑していて乗客とみられる人たちが右往左往しています。わたしが駆けつけた時は、JRの担当者が、拡声器をもって私鉄などへの振り替え案内を行なっていました。担当者はまた、「藤沢市役所が開放されているので休憩できる」とも話していました。
駅の周辺はさらに混雑が広がっていました。疲れ果てて座り込んでいる方々がいました。そして北口も南口もタクシー乗り場に長い列ができていました。これまで見たこともない長蛇の列です。

藤沢市役所は開放されていた

タクシーを待つ長蛇の列をかいくぐって市役所を訪れました。一階のロビーが開いています。イスにおよそ40人が座って休憩していました。警備員の方に聞くと藤沢駅から開けてくれないか申し入れがあった、目途がつくまで開放する、もし人が溢れたら5階や9階のスペースも開放すると話しました。

こういう非常事態に市役所を開放して、帰宅困難者を受け入れるのは素晴らしい対応だと感じました。しかし何か様子が違います。藤沢市の職員らしき人を一人も見かけません。
わたしもかつて帰宅困難者だった

12年前の東日本大震災、わたし自身が帰宅困難者になった経験があります。都内で仕事を終えてから藤沢に帰ろうとしました。一刻も早く帰って、家族を守りたいという強烈な気持ちに突き動かされました。わたしと同じ思いなのか、歩いて帰宅しようという人々で道はいっぱいでした。寒い中、みな声も出さず、ただただ歩いています。

道沿いには自治体が運営する休憩所があって、身体を休めることができました。どれだけ有難かったか分かりません。多摩川を越えるころは人数も半分以下となっていました。横浜市に入ったころは「仲間」は数人となっていました。午前3時、さすがに疲れて横浜駅の地下街で休んで始発列車を待つことにしました。周りでは防寒用品が配られていて、わたしも大勢に交じって雑魚寝しました。

ツイッターでの呼びかけ

再び藤沢駅に戻りましたが、午前1時を過ぎていて、すでに担当者はいません。それでも駅には次々と人がやってきます。気温も高い中、タクシーの列も一向に途絶える気配もありません。せっかく市役所を開放しているのに、それを帰宅困難者に知らせる人が誰もいないのです。お知らせの張り紙さえありません。

藤沢駅で係員にそのことを伝え、改札口に張り紙をするようお願いしましたが、一人で乗客に対応していて忙しそうです。北口のサンパール広場では、徹夜を決め込んだのか寝転んでいる方々が多くいて、市役所で休むよう声を掛けていきました。

しかし声掛けも限界があるので、ツイッターで「藤沢市役所が開放されているのに知られていないので拡散してほしい」と訴えました。すると見ず知らずの人たちが答えてくれました。たくさんの善意の気持ちに心が温かくなりました。午前4時過ぎに「東海道線が午前8時ころに運転再開となる」と発表されました。

今回は「災害」対応すべきケース

藤沢市がJRからの要望を受けて市役所を休憩所として開放したのは英断だったと思います。しかし厳しく言えば「開放しただけ」で、帰宅困難者に利用してもらおうと積極的に動いたわけではありません。
帰宅困難者への対策は、防災安全部が取り仕切っていて、災害が発生したとき、藤沢駅周辺では▲市役所をはじめ、▲市民会館、▲秩父宮体育館、▲藤沢公民館、▲神奈川県藤沢合同庁舎を使うことになっています。このほか民間の施設としては、藤沢商工会館とスポーツクラブNAS藤沢と協定しています。

わたしの違和感は当たっていました。藤沢市に聞きますと今回、市役所を開放すると許可したのは建物を管理している財務部の管財課であって、災害対応を行なう防災安全部ではなかったのです。だからこそ担当の職員が出てきて、帰宅困難者の誘導を行なうこともなく、飲食物やブランケットなど備蓄用品も提供されなかったのです。
これについて藤沢市では、事故によるけが人などが少なかった上、被害が拡大する二次的な災害にも当てはまらなかったためだと説明しています。つまり災害とまではいかないからという訳ですが、わたしは今回は「災害」に準じる行動が必要だったと考えます。

藤沢市こそ積極的に動くべきだった

事故が起きた場所は、鎌倉市内で、乗客は歩いて大船駅に誘導されました。当日の大船駅は藤沢駅以上の混雑ぶりで、帰宅困難者にあふれていたようです。事故が起きたのは確かに鎌倉市ですが、実はほぼ藤沢市なのに気づきます。市役所の本庁舎の位置を考えれば、鎌倉市より藤沢市の方がずっと近く、対応しやすいことも分かります。

もう一つ、重要なことがあります。藤沢駅と大船駅の間と言えば、神奈川県と鎌倉市と藤沢市が負担してJRが設置する「村岡新駅」が計画されているところです。新駅の設置については必要性が明確ではないとして疑問視する意見もあります。鈴木市長が本当に事業を進めたいなら、もっと積極的に動くべきだったと思いますし、もっとここでの事故に敏感であるべきだったと思います。鎌倉市と連携しつつ、小型のバスを借り上げて藤沢市役所に往復輸送するくらいの気構えがあっても良かったのではないでしょうか。

藤沢市は、今回のような市役所開放など広報面の周知を徹底したいほか、JRとの連携について改善していきたいと話しています。今回の事故では事故原因ばかりが注目されていますが、災害に準ずる帰宅困難者対策について改めて検証すべきだと思います。

帰宅困難者

帰宅困難

「経済格差」が子どもの「体験格差」につながる

経済格差が学力格差につながっているとして子どもたちの支援活動を行なっている公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」が、新しい調査報告書をまとめ、経済格差が「体験格差」にもつながっていると結論付けました。

この団体では、放課後の過ごし方で学力に格差が生じてる現状を変えようと、寄付などを集めて学習塾や習い事に使える「スタディクーポン」を提供しています。この10年余りで5千人を超える子どもたちがクーポンを活用して学んだということです。

団体では今回のコロナ危機を通じて、運動や文化活動、それに自然体験などの機会が減ってしまったが、そもそも経済的に恵まれない子どもたちは、こうした学校以外での体験活動が少ないと感じてきたそうです。このため去年10月、大手銀行の研究所とともに大規模な調査を実施しています。

経済格差が「体験格差」に

この調査は、全国にいる小学生の子どもがいる保護者を対象に実施されたもので、2097件の有効回答がありました。調査における「体験」とは、球技や水泳などスポーツ、音楽や語学など文化芸術といった習い事のほか、キャンプや海水浴など単発的な自然体験、動物園や美術館見学、旅行など単発的な文化的体験と定めています。

まずこうした「体験活動」への参加状況を聞いたところ、学校以外の体験がないと答えたのは、▲世帯年収が600万円以上の場合、11.3%だったのに対して、▲300万円未満の場合、3倍の29.9%に跳ね上がっています。年収が少ない家庭ほど体験活動が少ないことが判ります。

また「体験活動」をあきらめた理由については、▲600万円以上の場合、「保護者に時間的な余裕がないから」が最も多く、「家の近くに参加できる活動がないから」と続いているのに対して、▲300万円未満の場合、「保護者に経済的な余裕がないから」が最も多く、次に「保護者に時間的な余裕がないから」となっています。

時間的な余裕がないという答えは共に多いものの、経済的な余裕を理由に挙げたのは、▲300万円未満が56.3%に上ったのに対して、▲600万円以上は16.9%にとどまっています。

「水泳」と「音楽」で大きい格差

分野別にみてみますと所得が高い世帯と低い世帯でとくに差が大きいのは「スポーツ・運動」です。参加者がずば抜けて多いのが「水泳」で、▲600万円以上の参加率が32.7%なのに対して、▲300万円未満が14.8%となっていて、2倍以上の開きとなっています。ほかのスポーツで言えば「球技」はそれほどのひらきがありません。団体では、「水泳」は民間が運営しているのに対して、「球技」は保護者や地域のボランティアに支えられているため参加費用が違うためではないかと分析しています。

「文化芸術」分野で参加者が多いのは「音楽」で、▲600万円以上が17.5%であるのに対して、▲300万円未満が7.5%にとどまっています。ほかでは「科学・プログラミング」も差が大きく、高価な楽器やコンピューターを使う必要があるためではないかと分析しています。さらに格差が顕著なのは「自然体験」で、東京など大都市圏では、▲600万円以上が年間1万8900円余り支出しているのに対して、▲300万円未満は4000円余りで、4倍以上の開きとなっています。

「体験活動」の担い手とは

このように見てみますと費用の問題は、活動の担い手がどのような組織かによって変わってくることに気づかされます。調査では活動の担い手について調べていて、▲「定期的な体験活動の運営主体」について、「スポーツ・運動」、及び「文化芸術」は共に7割以上を民間が占めていて、残りがボランティアなどとなっています。▲「単発で行なう体験活動の運営主体」については、「自然体験」及び「文化的体験」、共に3割以上を民間が占めていて、保護者や友人など個人も3割前後に上っています。そのほかはボランティア、そして自治体・公的機関となっています。自治体・公的機関の割合は、「自然体験」が10.7%、「文化的体験」が17.5%となっています。

体験格差をなくそう

調査結果を受けて団体では、これまでは学力格差の解消に取り組んできたが、物価高などで体験活動が削られていく中、経済支援が必要だとして、体験活動に特化した「ハロカル」と呼ばれる奨学金制度を創設しています。今井悠介代表理事は「子どものときの体験はぜいたく品ではなく、成長する段階で必要なものだ。これまでのような才能のある子どもではなく、子どものやりたいことに対して支援を行なおう」と訴え、寄付など協力を呼びかけました。登壇者の一人である自然教室の運営者も、「遠出のキャンプに来る子どもはどうしても裕福な家庭になりがちだ。もっといろいろな子どもたちに体験してもらって、心の故郷をつくってもらいたい」として受け入れ先となった動機を話しました。行政と民間でまず役割分担の整理を経済格差が学力のみならず、体験格差につながることがデータとして示されたこと、そしてこのような奨学金制度ができたことは評価すべきだと思いました。

藤沢市でも中学生の73%が学習塾に通っていることが明らかになっていて、学力格差が顕著です。わたしはいまの学力が学習塾抜きでは成り立っていない現実を認めた上で、民間の力も借りつつ、学校を本来の勉強する場所に変えていく必要があると考えています。そのためには本業以外で忙しい教師が、授業に集中できる環境をつくっていくことが大事です。ただ一足飛びにという訳にはいかないので、当面の学力格差を開帳する一つの対策として「チャンス・フォー・チルドレン」が進めている「スタディクーポン」に注目してきました。

今回の体験格差への支援については、体験活動そのものが多様なため、ひとくくりできないなと感じました。まずは学校を含めた行政ができる分野と民間ができる分野を整理して、役割分担を見直す必要があるかと思います。

「水泳」「音楽」そして「プレイパーク」がカギ

地域への中学の部活動の移行が進もうとしている中、民間を活用していく流れは時代に合っています。とくに参加する小学生が多い水泳は、早急に取り組まなければならない課題です。いま全国的に学校のプールを統廃合する動きが出ていて、藤沢市でも民間のプール活用を含めた検討が進んでいます。学校から民間のプールへ水泳の授業が委託されれば、体験格差もかなり解消されるはずです。

音楽については、教える人材以前に、練習する場所が足りないという問題があります。藤沢市の場合、市民会館の再整備に伴って新しいホールを建設しますが、子どもたちが練習できる部屋を設置していくことが大切です。

自然体験と言えば、藤沢市には八ヶ岳の体験教室がありますが、身近な場所で自由に遊べるプレイパークが必要だと考えます。ただ野外での活動については保護者が安全面で心配しがちなので、世田谷区のプレイパークのように大人の指導者がいるのが大事だと思います。

団体では、本部がある東京・墨田区を中心に行政側とも連携しているほか、宮城県や沖縄県、岡山県にも担当者をつくって、各団体などとの調整を行なっています。せっかく立ち上がった奨学金制度ですので、これを機会に、全国的にも行政と民間が協力し合って、どこが体験活動を担うのが最適なのか話し合う必要があると思います。

体験格差

体験格差

校則の公開はどうなっているのか その現状

地毛の証明など行き過ぎた校則をめぐって、文部科学省は去年末、生徒指導のもとになる「生徒指導提要」を改正しました。
この中で文部科学省は、「教育目標の実現という観点から校長が定めるもの」とした上で、「校則を守らせることばかりにこだわるのではなく、何のために設けたきまりなのか、教職員がその背景や理由について理解しつつ、児童生徒がその意味を理解し、自主的に守るよう指導していく」「そのため内容を学校内外の関係者が参照できるようホームページなどに公開していくことや、制定した背景などを示すことが適切」と指摘しています。
改正から半年が経って、校則の公開は進んだのか、藤沢市の公立中学校を調べました。

千差万別なホームページ

19の中学校のホームページを開きますと内容が充実した学校もあれば、そうとも言えない学校があることが分かります。学校は子どもたちに勉強を教える場所なので、ホームページが充実しているからといってそれが良い学校だとは言えません。また教師の働き方が問題となっている中、本業ではないホームページの制作に時間をかけている暇もないのが実情だと思います。
しかしながら学校の中の透明化が求められている時代、誰でもアクセスできるホームページは学校と外をつなぐ大切な道具であるのも事実だと思います。
典型的なホームページは、校舎の写真が中央にあって、その下に最新情報が並んでいます。学校の行事や重要なお知らせなどが占めていて、こまめに更新している学校もあります。
サイドメニューと呼ばわれる項目も並んでいます。ほとんどの学校が10個前後のメニューがあります。多い学校でが16個で、少ない学校が5個です。だいたいが「学校の概要」や「お知らせ」、「部活動」、「学校運営協議会」が含まれています。またほとんどの学校が学校独自の「いじめ防止」への考え方を明示しています。

学校で災害対応が違う

各学校が緊急災害への対応について載せていますが、対応が学校によって違うことに気が付きます。登校前の場合、暴風や暴風雪、大雪、大雨、洪水のうち一つでも警報が出されていれば自宅で待機となっている学校があれば、大雨と洪水警報の場合は、二つが同時に出ていれば自宅待機としている学校があるなど様々です。
また学校に登校するかどうか判断する時間もまちまちです。午前6時半もあれば、7時や7時半の学校もあります。さらに大地震については、震度5弱以上なら登校しないとされますが、大地震への対応は掲載していない学校も多くあります。

何を重視しているのかが漂う

ホームページに載っているキーワードからその学校が何を重視しているのか何となく漂ってきます。▲藤沢第一中学校はヤングケアラー、▲湘洋中学校は不登校やコミュニティソーシャルワーカー、▲片瀬中学校は児童虐待や子どもの権利条約、▲湘南台中学校は総合学習やスクールカウンセラーなどです。▲長後中学校が、自宅学習用の配布プリントまで公開しているほか、▲高浜中学校も、教科ごとに民間の学習サイトにつながる項目を設けています。
このほか、授業内容や生活面などの「学校評価」やタブレット端末を使ったオンライン学習の説明、高校などへの「進路通信」に力を入れている学校も多々見られます。

「校則の公開」は1校だけ

あきらめかけたとき、一校だけ校則を公開している学校がありました。御所見中学校です。
御所見中学校で学ぶみなさんへと題された校則集は、7つの項目があります。▲「きまり」の中では、「学校は社会であり、自分とは違うほかの人と過ごす社会だ」「誰もが気持ちよく生活できるようにきまりがあり、きまりは守らなければならない」と定めています。

▲次の「服装・身だしなみのきまり」では、まず「中学生らしく、さわやかに」とされています。とくに髪の毛については、「整髪料や派手な飾りはふさわしくない」「髪型を楽しむことを目的として学校生活を送らないように」「染色、脱色が禁止なのは言うまでもない」としています。
服装は標準服か体操着で、靴下については「丈が短いくるぶしソックスはふさわしくない」とした上で色も落ち着いた色に決められています。また安全のため靴のかかとは踏みつぶしてはいけないとしています。

そのほかは、▲ロッカーの使い方や職員室への入り方を定めた「ひと・こと・ものを大切に」、▲登校から授業、昼食、放課後の流れが書いてある「一日の生活」とその注意、▲「持ち物や生活上のきまり」、▲スマートフォンなどを無断で持ち込まないよう定めた「心がけよう」となっています。昼食は登校時に買ってはよいが、下校時には買ってはいけないとされたり、あいさつは自分から大きな声でするように書いてあります。

教育委員会「説明していく」

校則がホームページの奥の方に入っていて、見過ごしたケースもあるかもしれません。しかし東京・世田谷区は3年前に、すべての中学校の校則がホームページ上に公開されています。それに比べて藤沢市では少なくてもはっきりと公開していたのは御所見中学校だけだったのには驚きました。

藤沢市教育委員会は、校則について「生徒指導の担当会議で情報を共有していて、例えば熱中症への対応など子供の意見を聞きながら見直しを行なっている。必要のないものについては考えていかなければならない」と話しています。
また公開については、全体としては把握していないとした上で、「児童生徒には直接、説明しており、保護者だけが閲覧できるホームページもあると思う。公開するかどうかは各学校の主体性に任されているが、教育委員会としては透明性が大事だと考えるので説明していきたい」と述べています。

校則

公園の緑は「ソフトパワー」 

東京の明治神宮外苑の再開発事業が着工されました。この事業は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の位置をほぼ交換する形で建て替えるほか、3棟の高層ビルを建てるもので、同時に一部の樹木が伐採される計画です。

これに対して住民や学者などから歴史ある貴重な緑や景観が失われる恐れがあるとして、事業に反対する声が挙がっています。

わたしも建築士などの市民グループが主催する現地の説明会に参加しました。わたしは、藤沢市で緑と景観を守るよう主張しており、神宮外苑にあるスケートリンクでアイスホッケーの練習をしていた縁があったからです。

「貴重な緑と空を守りたい」

神宮外苑と言えば、青山通りから4列に並ぶイチョウ並木が有名です。これについて事業者は「イチョウ並木はすべて保存し、北にある絵画館前の広場を望む見通し景観を継承する」として、球場の整備に当たってはイチョウの根の状態を調べて踏まえるとしています。これに対してグループでは、球場の外壁がイチョウ並木に近すぎて、杭の長さも考えれば根に影響が及び、保全が危ぶまれると主張しています。球場の周りには高層ビルも建つことから、景観も阻害され、ビル風も懸念されるとしています。またイチョウ並木の横からいまのラグビー場へと連なるイチョウについては、移植も検討するとされているものの、移植先や移植方法が示されておらず、具体性がないと不信感を示します。専門的な見地から、根回しやクレーンでの作業が必要で、費用もかなりかかると予想されることから現実性が乏しいと話します。さらに国立競技場と解体が始まった第二球場の間にある樹林の多くが伐採されるほか、いまは軟式野球場となってる大きな広場にテニスコートを作るため、大半の樹木が伐採される計画です。

2時間半を超える現地説明だったにもかかわらず、70人を超える参加者は熱心に聞き入りながら、木々の存在を確かめていました。わたしも都会のど真ん中にこれほどの緑あふれ、人々が集う公園があることに驚くと共に民間なのに公共性が高い場所だと感じ入りました。

専門家も事業の見直しを求める

こうした抗議を受けて、事業者は移植などによって伐採する樹木の本数を減らすと発表しています。3メートル以上の木は、いまの1904本から1998本に増やす計画です。伐採本数は当初より149本少ない743本で、移植予定は275本としていますが、新しく837本植えるためです。文化遺産の保存に係るユネスコの協力機関・日本イコモス国内委員会も、問題を追及してきました。委員会は「神宮外苑は国民が育んできた公共空間であり、優れて美的な公園風景だ」と評価した上で、今回の事業について「住民の声を受け止め、全面的に見直すよう」求めています。とくに東京都が環境影響評価の審議が終わらないのに事業を認可したことなど、十分な議論もなく話が進んだ点を批判しています。その一方で、いまある樹木を守るため、現在の球場とラグビー場の位置を変えずに建て替えるなど代替案も示しています。

民間の力でスポーツ拠点の整備を

事業者側の狙いは明確です。第一に挙げているのは、建て替えを進めることで国立競技場と連携しながら多くの人が訪れるスポーツ拠点を整備すること、そして青山通りの沿道には商業など都市機能を入れて賑わいをつくることです。

開発が制限されているはずの都市計画公園ですが、東京都は民間の力を利用した再開発ができるよう規制を緩和できる「公園まちづくり制度」を10年前、つくりました。オリンピックをきっかけに神宮外苑の「スポーツビジネス」としての性格を強めようという意図が感じられます。

東京都も市民グループの要望を受けて、事業者側に緑の保全に努めると共に具体的な計画や住民参加など情報発信するよう要請はしています。しかしこれまでの経緯を見れば、行政こそが費用が掛からないで済む民間主導の再開発を応援していることが分かります。

都会の緑がもつ「ソフトパワー」

わたしは現地説明を受けて、「ソフトパワー」という外交用語を思い出しました。軍事力や経済力に代表される「ハードパワー」に対して、良い理念や文化を通して相手を魅了し、自分の望む方向に動かす力とされます。神宮外苑の緑や景観はまさに「ソフトパワー」なのではないか、そう思わざるを得ませんでした。

わたしは去年9月議会の一般質問の冒頭で、実は神宮外苑の問題を取り上げました。なぜ神宮外苑の樹木伐採が問題になっているのか、それは都会の緑が少なく、貴重だからだと指摘しました。その上で藤沢市も人々が行きかう都市部や住宅街の緑を増やすこと、「見える緑」を増やすことこそが価値向上につながると訴えました。

都会の緑は少ないからこそ価値があります。商業施設のような数字では表せないものの、神宮外苑に緑があるからこそ、周りの価値も上がっているのです。まさしく見えないけど影響を及ぼす「ソフトパワー」だと言えるのではないでしょうか。

市民グループの挑戦

事業計画の見直しを求める市民グループは多岐に渡ります。現地説明会の主催者によりますと各々が、都議会に働きかけたり、訴訟を起こすなどあらゆる方法で立ち向かっているそうです。しかしながら報道などで注目されるようになったとはいえ、まだまだ社会の関心は低く、各々が手弁当で行なっていることもあって苦労が多いと話していました。さらに事業計画のどの部分の見直しを求めるのか、各々で考えが異なることもあり、争点を絞りづらいとも語りました。

都会の貴重な「ソフトパワー」を守るべく、再開発自体を止められればよいのですが、法的な外堀が埋まっている中、なかなか厳しいと思います。個人的には、再開発は仕方ないとしても現存する樹木を極力残せるよう、建物の立て方を工夫したりできないものかと考えます。

再開発の現実とルールの必要性

わたしは住宅街ではありますが、民間の再開発によって地元が変わっていく姿を目の当たりにしています。藤沢市の鵠沼地区は昨今、土地の分割によって自慢の松が次々に切られ、緑が減っています。このため自治会によっては代わりの木を植えるよう求める独自の協定を結んでいます。しかし法的な裏付けがないため、実際には相応の緑が植えられない例も少なくありません。わたしは条例化を求めてきましたが、消極的な答弁しか返ってきませんでした。何かしらの法的なルールがなければ再開発の波を止めることは難しいのが現実です。

残念ではありますが、東京がさらに「東京化」することは、東京郊外のまちにとっては逆にチャンスになると思っています。藤沢は、第二第三の東京になる必要はありません。自然と都市が調和したまちとしての価値を行政のリーダーシップで高めるときです。

神宮外苑

神宮外苑

神宮外苑

神宮外苑

 

交通政策こそ環境政策

今年の大型連休は、各観光名所もコロナ危機以前のにぎわいを取り戻したようです。藤沢市の江の島やとなりの鎌倉市も連日、人出で混む様子が報道されました。

わたしは江ノ電の込み具合を確認するため、混雑が予想された5月3日の午前中、藤沢駅の周りを調べました。果たして混雑は本物だったのでしょうか。

コロナ前ほどの混雑はなし
午前10時。藤沢駅では10人ほどの係員がミーティングの後、改札前からJRにつながる2階のデッキ上に配置されました。デッキ部分には駅へ向かう人と駅から出てくる人を分けるためロープが張られました。
 
コロナ危機直前の2019年の大型連休中も調査に来ましたが、午前中の混雑はすさまじいものでした。長蛇の列はオーパ側から旧横浜銀行、そしてJR側までデッキを囲う形につながりました。今年もこれくらいの混雑が起きるのではないかと想像しました。

ところが午前11時を過ぎても行列はできません。駅構内は行列ができて、電車に乗れずに次の電車を待つ事態は生じていましたが、以前のような異常事態は起きませんでした。混雑が予想された3日間について江ノ電に聞いたところ、4日は改札を出たところまで列ができたものの、コロナ危機前ほどの混雑はなかったということでした。

住民優先の取り組み
わたしが江ノ電の混雑ぶりを調べるようになったのは、鎌倉市が6年前、住民を優先する社会実験を始めたからです。これは大勢の観光客が来ることで生まれる混雑に住民が巻き込まれないよう、あらかじめ発行した証明書があれば、優先的に駅構内に入れるものです。同じ観光地であり、同じ江ノ電でつながっているのになぜ藤沢市はこのような取り組みを実施しないのか不思議でたまりませんでした。

鎌倉市は2019年の取り組みを検証しています。それによりますと証明書を申請した方は、極楽寺や稲村ケ崎などを中心に2811人に上っています。そのうち実際、証明書を利用した方は136人となっています。混雑の状況については77%が「混雑していて移動に支障がある」と答えていて、9割が取り組みに理解を示しています。

取り組みの成果は
検証結果を見ると実際に利用した市民は多いわけではありません。証明書を使って短縮された時間も半分の10分程度となっています。藤沢市でもそうですが、鎌倉市でも混雑が予想されるため、わざと混雑する時間帯を避けた方も少なくなかったと聞いています。実際の効果に比べて支持が高いのは、いわゆるオーバーツーリズムへの対策もあって、住民のことを配慮してくれる鎌倉市の姿勢が評価されているからだと思います。

コロナ危機の最中は取り組みをやめていた鎌倉市ですが、今年は4年ぶりの再開となりました。鎌倉駅も藤沢駅と同じように異常な混雑はなかったようですが、まったく混んでなかったわけではありません。わたしも住民だと思われるお年寄りの方が藤沢駅の改札口前でうろうろしている姿を目撃しました。

環境政策としての交通政策を
鎌倉市は交通政策に熱心で、クルマから電車に乗り換えるパーク&ライドを推進したほか、渋滞がひどいときは中心部に乗り入れるクルマに課金する「ロードプライシング」について検討しています。鎌倉市としては観光業と住民生活の均衡を図っていますが、こうした交通政策は、クルマからの排出ガスを減らす環境政策にもつながるものです。

藤沢市は鎌倉市と歴史は違いますが、自然環境を大切にするという価値観を共有しているはずです。江ノ電の住民優先の取り組みもそうですが、藤沢市はなぜ積極的に動かないのか理解できません。わたしは藤沢の価値は、海と緑など自然と都市部が調和している点にあると思っています。こうした価値をしっかりと認識し、磨いていかなければどこにでもある普通のまちになってしまいます。

江の島こそ環境政策の舞台に
テレビでは大橋の車線が広がって、島内の駐車場が混雑する江の島の様子も映し出されていました。江の島こそ渋滞時は、クルマの乗り入れを規制すべきだと訴えてきました。消防団として花火大会の警備に当たったとき、クルマのあまりの混雑ぶりに防災やテロ対策上、リスクが大きいとも感じたからです。

繁忙期は「環境税」を徴収して大切な江の島島内の環境美化に充てるのも一考かと思います。江の島は特別景観形成地区であるからこそ、環境政策を体現する格好の舞台になれると思います。環境政策に熱心な自治体はこれからますます評価を高めます。環境政策こそブランド力を上げるために必要です。

江ノ電混雑

江ノ電混雑

藤沢市議会議員 清水竜太郎
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