元藤沢市議会議員 清水竜太郎 オフィシャルサイト

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高まる「特別市」への動き・「中核市」への移行を

去年、藤沢市内で2歳の男の子に暴力を行なって死亡させたとして、母親が逮捕される事件がありました。男の子を施設に入れるなど親子の支援を行なっていた児童相談所の対応が問題となりました。

この事件で浮かび上がったのが、支援を中心になって行なっていた児童相談所が、藤沢市ではなく神奈川県の児童相談所だったことです。児童相談所が県ではなく、より身近な市の管轄だったら対応も違ったのではないかと想像してしまったのはわたしだけでしょうか。

「政令指定都市」は児童相談所も

県内には合わせて15の児童相談所があります。藤沢市にある児童相談所は、藤沢市だけでなく茅ケ崎市と寒川町も担当します。しかし「政令指定都市」である横浜市は4か所、川崎市は3か所、相模原市は1か所、それに中核市である横須賀市は1か所、県ではなく、それぞれ市が独自の児童相談所をもっています。

政令指定都市は人口が50万人以上の都市が指定され、児童相談所を設置できるほか、小中学校の教員の任免や幅広い都市計画決定ができるなど権限があります。中核市は人口20万人以上の都市が指定され、保健所や児童相談所を設置できるほか、屋外広告物の設置制限などの権限をもつことができます。

横浜や川崎市など「特別市」への動き

あまり知られていませんが、政令指定都市である横浜市と川崎市、それに相模原市はいま、「特別自治市」をめざす取り組みを活発化させています。「特別自治市」は通称「特別市」と呼ばれ、法的な制度がないため、国などに制度をつくるよう働きかけています。

特別市とは、神奈川県の区域から外れて、市単独で県がもっている権限と財源を受け持とうというもので、いわば神奈川県からの完全独立を意味します。3つの政令指定都市は話し合いを重ねています。

川崎市の福田市長は「特別市という完全な自治体になることで、より住民に寄り添ったサービスを提供できる。住民にとって、もっともよい自治体の形は何か考えるときだ」と強調します。

横浜市は「ひとつの県」に匹敵

神奈川県の人口は東京都に次ぐ920万人余りで、そのうち横浜市は370万人余りです。横浜市だけでその人口は、福岡県より少ないものの、静岡県より多く、立派な「ひとつの県」に匹敵します。川崎市は150万人余り、相模原市は70万人余りです。

特別区を敷いている東京都を除けば、神奈川県は独特の存在だと言われます。3つの政令指定都市がある上、中核市もあり、県が実際に担っている事務はほかの県に比べると少ないと指摘されています。

わたしはかつて静岡県と沖縄県で勤務しましたが、確かにそれを感じます。いまでこそ静岡市と浜松市は政令指定都市になりましたが、県庁の存在感は圧倒的でした。

「特別市」でもっと権限と財源を

横浜市などはまず▲二重行政を解消できると主張します。例としては公営住宅や図書館、博物館、体育館、プール、それに中小企業への支援や商店街の振興策などです。それぞれが市と県で重複して担当してるため、無駄が生じているとしています。

次に▲役割を分担しあっている事務も一本化する方が好ましいと指摘しています。市が担当する保育園と県が担当する幼稚園のほか、河川の管理や医療計画、就労支援などです。

教員の任免など県から権限が委譲された例はありますが、権限移譲を待つのは時間がかかり過ぎて現実的ではないとしています。災害時の自衛隊の派遣要請やコロナ危機のような対応も県を通さず、国と直接交渉した方が効率的だとも指摘します。

もう一つが財源の問題です。3つの政令指定都市で県税収入の6割を負担していますが、ひとり親家庭の医療など県からの補助率がほかより低くて不公平だとしています。

神奈川県は反発

これに対して神奈川県は、「特別市の法制度は妥当ではない」と強く反発しています。理由としては医療や水源など神奈川県が総合調整している機能が失われるほか、財源不足からのサービス低下を懸念しています。3つの政令指定都市の県税は合わせて5800億円に上り、県税が大きく減ると医療費の助成や私立学校への補助などが厳しくなると強調しています。

わたしはいわゆる平成の大合併で港町として知られたものの、衰退していた静岡県の旧清水市が静岡市と合併したうえ、政令指定都市になる姿を目の当たりにしました。合併など夢物語だろうと思っていましたが、旧清水市の危機感は想像を超えていました。もちろん合併や特別市が最適の答えなのかは一概に言えませんが、住民の利益にかなう新しい形について議論していくのは望ましいことだと思いました。

藤沢市はもっと貪欲になるべき

ひるがえって藤沢市を考えると権限や財源を増やすことに消極的だと感じざるをえません。議会でもさまざまな提案に対して市側が、「周辺自治体の取り組みを注視する」と答弁する姿を何度も見てきました。3つの政令指定都市を除けば、藤沢市がいま、最も人口が大きい自治体であることを考えれば、受け身の姿勢ではなく、ほかの自治体をリードする姿勢が必要なのではないでしょうか。

その一つの表れとしてやはり中核市になっておくべきだと思います。中核市になる利点としては、保健所や児童相談所を設置できることや、身体障害者手帳の交付が早まること、民生委員の定数を決められること、産業廃棄物の指導ができることなどのほか、中核市市長会に属することで地方分権の議論を進める役割を担うことができます。

確かに中核市になれば権限だけでなく責任と財政負担が増えます。とくに保健所については、藤沢市は「保健所政令市」として設置が認められています。藤沢市が独自の保健所をもっていたことから、コロナ危機では人材の増強や感染者への対応など現場は計り知れない責務を負うことになりました。

しかし責任は重いけど自分たちで決めれる裁量も大きかった訳です。感染者の人数などの情報も独自に発表されただけにわたしも逐一詳しい情報を市民の皆さんに伝えることができました。できれば独自の警戒アラートの設定や感染リスクが高い対象者への検査などもっと積極的に取り組んで欲しかった面もありますが、権限をもつことの重要性を実感させられました。

いまの藤沢市は40万人都市であることに安住して、まちの強みを磨いたり、サービスを高めようという意気込みを感じません。子育て政策に力を入れるなら、やはり自前の児童相談所は欲しいところです。3つの政令指定都市を除けば、いちばん大きい都市であることを自覚して、ほかの自治体をリードしていく気概が必要だと思います。

児相

藤沢市議会議員 清水竜太郎
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