子どもたちが公園でボール遊びができるよう、千葉県船橋市は、基本ルールを定めた上で17の公園を指定するなど先進的な取り組みを行なっています。わたしは、自由に遊べる身近な公園を藤沢市内にたくさんつくりたいだけに大変参考になります。
船橋市では、中学生からの要望を受けて、6年前に検討委員会を設けて、ボール遊びができるようにするにはどうしたらよいか試行してきました。形態の異なる5つの公園を舞台にボール遊びをしてもらう実験を行なってきました。数名の見守り役のもと、決められた日時に、ボールを貸し出して遊んでもらい、参加人数の動向や課題を洗い出しました。その結果、部活動などで忙しい中学生の参加は1割に満たず、小学生の参加が圧倒的で、未就学児も2割近いことが判りました。
船橋市ではまた、大規模なアンケート調査も実施してきました。小学5年生に公園での遊び方について聞いたところ、▲鬼ごっこが最も多く、▲ボール遊び、▲滑り台など、▲ゲームとなっています。ボールを使って遊びたいのは、▲ドッジボールが最も多く、▲サッカー、▲野球が続きます。
近隣住民へのアンケートでは、ボール遊びが危険だと感じるのは、▲外にボールが飛び出すが最も多く、▲バットなどを使うこと、▲小さい子どもと大きな子どもが同じ場所で遊ぶこととなっています。必要なルールとしては、▲夜間や早朝に遊ばないが最も多く、▲試合形式など公園を独占しない、▲柔らかいボールで遊ぶとなっています。時間については、▲午後5時までが半数を超えています。さらに協力できることに聞いたところ、▲特になしが半数近くある一方、▲不定期な見守りが4割に上っています。
こうした試行錯誤の末、決まった基本ルールは、▲公園の外に飛び出さない、▲硬いボールは禁止、▲幼児など周りに気を付ける、▲世代間で譲り合って使う、▲周りに迷惑になる大きな音を出さない、▲朝早く、夜遅くは遊ばないとなっています。船橋市は、安全性や面積、近隣の自治会などの理解を得ながら、スポーツ公園などを除いた、基本ルールで遊べる5つの公園および、公園ごとのルールで遊べる12の公園を決めて、運用を始めています。
この中には、公園ごとのルールがある公園は、いわば中学生の利用も想定していて、公園内の多目的広場の広さが1500平方メートル以上、ネットやフェンスがあるなどの条件を満たしたものです。しかし、実際の個別ルールをみてみますと「住宅側のボール遊びは禁止」や「バットとラケットは禁止」、「ボールを打ち上げない」など極めて常識的な内容です。
委員会は、報告の巻末に次のように書いています。「利用者や住民の軋轢を回避するため、公園にルールが必要となった。ルールは公園を利用とする誰もが安心できる内容とされるから、最大公約数的なものとなり、窮屈なものになる。楽しさより、安心に重点が置かれ、ボール遊びがしづらくなった」、「ボール遊びができる空間は、高いネットを整備し、利用者のすみ分けを図ればいいという単純なことではない。公園緑地は、美しく、潤いのある都市景観であり、不快な施設と映ってしまう恐れがある」、「公園利用への考えは多様で、これを非難することも協力を強要することもできない」。