藤沢市に住む画家の廣田雷風(らいふ)氏が、商工会議所で講演し、湘南台駅の地下通路に完成した巨大壁画についてその思いを語りました。
廣田氏はパリで絵の勉強をした後、長年にわたり芸術分野で活躍してきました。湘南台駅にできた壁画は、ピアノの演奏会が開かれる地下通路の一角にできたもので、情熱的な赤色を下地にお祭りや自転車、楽器が楽しそうな雰囲気で描かれています。
廣田氏は2か月間、現場で壁に直接、絵を描いてきたが、地下通路を行きかう人々のエネルギーを感じて後押しされたと話しました。絵自体は試行錯誤の連続で、故郷である藤沢の印象をもとにしたファンタジーを壁に描いては何度も塗り直しながら描いていったということです。
廣田氏はまた自身が卒業した湘南高校の100周年を記念したモニュメントも制作しています。飛躍への思いを込めた翼の形を描いたモザイクは、廣田氏の原画をもとにつくられました。
モザイクはタイルを焼いたもので、日本で頼むと予算が足りないので、中国の職人が担当したそうです。廣田氏はリモートで出来具合を確かめながら、微妙な色合いを指示して完成度を高めていったそうです。
壁画の作成は廣田氏の得意とするところで、レストランやバー、病院などの壁画を描いてきました。興味深かったのはバブル時代、都内の店舗の壁画を描いたのに、突如、取りやめとなり、損をしてしまった話です。描いた壁画がある部屋は、その後、所有者が次々と変わり、さまざまな用途に使われましたが、壁画はその場面場面を飾ってきました。しかし最近になって、その建物が取り壊され、壁画も同時に壊されたということです。
商業向けに作られた芸術は、目的を達すると捨てられ、壊される運命にありますが余りにはかないなと思いました。