藤沢市は老朽化した市民会館の建て替えを計画していますが、民間との連携を図るため、どのような形なら参入できるかアイディアを募集していて、来年度策定する基本構想に反映させます。
委員会では人口が減少する中、市民会館を運営していくには収益性を考慮しなければならないという意見が相次ぎました。わたしも収益性の確保は欠かせないと考えており、ホールや図書館が人を集める武器であることを考えれば、否定されましたが、藤沢駅前への移設も検討すべきだと考えています。そういう意味で官民連携に向けたアイディア募集に踏み切ったことは評価すべきことだと思います。
実際ホールを取り巻く現状は厳しいものがあるようです。わたしは単なる箱をつくるのではなく、藤沢の芸術文化を高めるため特徴があるホールをつくるべきだ、そのためには藤沢市がどういう文化をつくりたいのかが重要だと訴えています。藤沢市は市民オペラを柱にしたいと答えているので、オペラ向けの劇場をつくるのがよいのではないかと考えています。
理想と現実はどうなのか専門家の意見を伺いました。オーケストラの演奏には音響が大事で、反響板などの設置が重要です。近年では近隣都市でも音響が優れたホールが多くなっているということです。オペラの場合、ステージと客席の間に「ピット」と呼ばれるオーケストラ用の一段階下がった空間のほか、舞台裏には大道具を出し入れする空間も必要になります。
収益性はホール共通の課題です。コンサートなどは土日曜が多く、平日の稼働率をいかに高めるかが課題です。日本は分厚い中間層に支えられ、クラシック音楽が人気で、演奏する側も鑑賞する側も多いそうです。しかし最近は中間層が減ってきており、観客離れが懸念されます。また演奏者にとっては練習場不足が問題で、スタジオを併設するなど次世代を育てることが大切だという意見をいただきました。
ホールをつくった後の文化行政を描かなければ運営は厳しくなるという指摘も出ています。稼働率を上げるためには、都内からの公演をどれだけ誘致できるかにかかっているとしています。例えば横須賀市にある全国屈指の劇場は、立地が問題となっていて苦労しているようです。
プロとアマチュアが協力してつくる市民オペラは、プロの所属団体に関係なく歌手の配役ができる特異なもので、藤沢市にオペラ向けのホールができれば絶対的な価値になるという意見もいただきました。客席も1800席以上が望ましいものの、行政の覚悟と市民の理解が欠かせません。
その一方で、余り凝り過ぎると使いづらい、商業的すぎるのは避けたい、ホール周りの環境も考えて欲しいという意見も出ています。
財政が厳しくなる中、どういう形で文化芸術を守り、発展させていくか難しい問題です。藤沢市は建て替えを急いでいますが、何が藤沢の文化であり、それがどのようにまちづくりに貢献できるのか固めなければなりません。この度はたくさんの有益なご意見をいただき、お礼申し上げます。